「ほっ」と。キャンペーン

棚猫

天井と棚の間は二十センチほど。
猫はその間に上手に上がりこんで、
いつも眠っている。

「そろそろ学校に行くからさぁ。
朝ご飯、入れておくから」

棚の上を見上げて声をかけた。
相手は猫だ。返事があるわけはない。
ただ、そうしておかないと、
空腹になって部屋のあちこちを
物色し出すような気がしたし、
出かけるときは大抵、声をかけていた。

缶詰から取り出した白身魚を
トレーに入れて台所の隅に置く。
たぶん、帰る頃にはトレーは
空になっているだろう。

猫と暮らし始めた頃は、
部屋が汚れるような気がした。
しかし、掃除機をたまにあてれば、
そんなに汚れもしないし、
何より、猫は用を足すのに、
外の雑木林に行ってくれる。
そして、部屋に戻ってくると、
ほとんどの時間、棚の上の、
天井との間で眠っていた。
二十センチの間がちょうどいいらしい。

「夕方、暗くなるまでには帰るよ」

扉の取手を握り振り返った。
誰もいない殺風景な部屋があった。
そう言えば……また思い出した。
この部屋で、猫を膝に抱き、
一緒に暮らした。

棚の上には、猫が眠っている。
見ていないけど、あの日のマフラーも
まだ、置いたままだ。

「行ってきまーす」

あの棚、もう外そう。
年末までには時間も取れるだろう。
猫にはわるいけどしようがない。

ミャー……扉を開けたとき、
珍しく棚の上の猫が鳴いた。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-11-19 20:40 | ぬ~ん

風の粒

キラキラじゃなし、サラサラじゃなし、
目にする最中の見えない粒が、
人を通して散ってゆく。

無能のままでは終わらずに、
できるだけ、いやきっと、
全ての時を乗り越える。

ありのまま、いやそのままに、
粒は、粒らと重なって、
木の葉を運んで、雲をほどいた。

キラキラじゃなし、サラサラじゃなし、
世界のどこかで眠ってくれ。
新たに加わる命の灰。
お疲れ様、ご苦労様、ありがとう。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-11-14 22:39 | ぬ~ん

その神様

その神様を知らずには、
どこにも行けない。
人には、その神様が必要だ。
その神様は見えないものだから、
誰かに言われて、
気がつけるわけではない。

長くかかることも、一瞬の
こともある。
人間は、その神様に気づける。
そこが素晴らしいし恐ろしい。
人間は、それだけでは完成しない。
そこが楽しみであり悩ましくもある。

帰ったら、複雑な話はしない。
そう思いながら歩く。
帰ったら、お風呂にしよう。
そう思いながら歩く。

灯りを選び、入浴剤を選び
何でも聞いてくれる、
その神様のようになりたい。
けれどなれないでいる。
なれるわけがないか。
いや、気づけばなれる。

寒くなった。冬になってきた。
その神様の季節が近づいている。
大きなもみの木を、また見たい。
その神様のようになって、
また見てみたい。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-11-13 20:44 | ぬ~ん

底ガサ

カシャカシャカシャガサ。
靴の底から乾いた音がした。
ぼくは、木の葉の落ちた道を、
一人歩き続けていている。

どこかの森では紅葉が見頃だという。
それは見ておきたいと思うほどに、
季節はずっと先を進んでいる。

まだまだ、日差しがきついと、
秋を邪険にしていたからか、
心地よい風には吹かれない。
意味不明なことを、
隣人が、言ってくる間は尚更だ。

カシャカシャカシャガサ。
靴の底から、ぼくの底から、
乾いた音がした。
ぼくは、木の葉の落ちた道を、
これからも、明日からも、
一人歩いてゆく。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-11-11 23:05 | 悲しい

波風と雲の

当たり障りのない話ばかりで、
つまらないでしょう。
あってもなくてもいい話じゃ、
あなたが退屈しているのもわかる。

ほんとうに、日常のことなんて、
真正面から向かわないと、
何も変わらない。波風も立たない。
ずっと、このままでもいいやと、
また、当たり障りのない話が続く。

あなたは、退屈を通り越して窮屈になる。
あなたは、ほんとうの暮らしを思う。
ありのままで、夢を見たって
かまわないんじゃないか。
そして、遠い空を見る。

翼を開げた鳶の舞いがある。
当たり障りのない話はなくて、
ありのまま、ありのまま、
あなたは、風に乗れると思い始める。
雲の彼方へと、消えてゆけると
思い始める。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-11-10 22:34 | 淋しい

野菜を多め

野菜を多めに食べようとしなくても、
野菜が美味しいと思うようになり、
自然に、多めに食べるようになった。

野菜など、子供の頃食べられ
なかった物が、
美味しい物になってくるのは、
誰だって、経験があるだろうが、
そうじゃない人もいる。

年上の知り合いに、
今でも子供の多くが好きな、例えば、
ハンバーグとか唐揚げとかが
好きな人がいる。
和食はほとんど、食べられず、
野菜はキャベツだけらしい。

その人は、とても元気で、
いつも好きなように動き回っている。
周りの人が大変だと聞いた。

子供のままだと、
男は時々、人に言われる。
舌についても、そうなる人が
多いのかもしれない。

野菜を食べるときに、
ふとその人のことを考える。
自分とは逆の性格を想像する。
色々と感じることがある。

偉そうなことは言えない。
ただ、野菜を食べたほうが、
良かったんですよと、言いいたい。
野菜を食べてくれたなら、
多くの人が、もっと幸せに
なれたんだと。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-11-09 18:01 | 悲しい

最後は

どうしても生きられなくなったら、
最後は逢いたい。
どうしても無理だとわかったなら、
最後は泣きたい。
思いのままの、自分を感じたい。

宇宙のどこかで、今、起こって
いることは、
知らないから無いのと同じになる。
それぐらいの、哲学を知って、
向こうに向かってゆくのが、
今の人間の端かもしれない。

変わり者だろう。
着ることも、食べることも、
暮らすことも、そんなにいらず、
誰かの笑いに悲しみを得て、
誰かの涙に無力を出して、
自分の中にしか、誰も見えない。
それすら見えなくなったら、
ほんとに最後だ。
そんな最後は、ゆっくり眠りたい。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-11-05 20:51 | 独り言

思う息

急に言われても困ることを、
急に言っても聞いてもらえる人を、
人は好きになるみたいだ。

便利さと面白さと神秘さがあるなら、
人はある程度生きてゆける。

そこに、礼儀正しさと、
目指したいものを目指す熱があれば、
人はほとんど最後まで、
生きてゆける。

ぼくは、最後まで生きたい。
そのためにも、自分の考えを
大切にしたい。

できると思っていることを、
笑い飛ばされても、
できると思って息をしていよう。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-11-03 20:23 | ぬ~ん

湧き水の

地震の前の日まで、
父親と、湧き水を汲みに行っていた。
車で二十分ほどのところにある
温泉の側で、六甲の水が汲めた。

その水でご飯を炊き、お茶を沸かし、
珈琲も入れた。
何がきっかけだったんだろう。
それはもう思い出せない。
父親だって、もう忘れているだろう。

地震がなかったら、
ぼくは、父親と湧き水を汲み続けて、
父親ともっと話をしていたかもしれない。
新しいことを見つけて、
今とは違う世界にいたかもしれない。
あの日の続きがあるとしたら、
なんとか、見てみたい。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-10-29 20:25 | ぬ~ん

見えない人

長い時間が過ぎた後でも、
辛い事に出くわした後でも、
ぼくは、なにも変わらずにいた。
部屋を出ていったのは、Mだった。
ぼくは、夜中、Mを探した。

何気ない時間が、通りに溢れていた。、
それだけで、涙が出そうだった。
得ようとしても、得られずにいた。
欲しくもないのに、かさばった。

Mにとって、ぼくは思い出に
なるのかどうか。
地震のとき、自転車で様子を見に行った。
どこに行ったのかわかりようもなく、
ぼくは、立ち尽くした。

あれから、Mがぼくに望んだことが
見えてきた。
でも、ぼくにはMが見えないように
なっていた。
部屋はもう、跡形もない。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-10-28 20:42 | Mのこと

柿三つ

片隅にある柿に手を伸ばし、
まだ熟していないことを知る。
今年ももう少しだけ間がある。
ぼくは、十月の半ばを生きている。

日差しが暑苦しい。
秋本番にはまだまだで、
紅葉を見に行くまでには、
Tシャツも用はなくなるだろう。

夏と冬の間は、秋だから、
当然、秋のために動いてほしい。
ぼくには何故か、
色んな用が残ってゆくだけに、
柿だって、熟さないまま、
萎びてゆくように見える。

秋のために、当たり前のことのために、
ぼくには何ができるんだろう。
それがもし、自分のことではなくて、
誰かのことでしかないなら、
受け入れるしかないんだろうか。

柿は今年、三つしか実らなかった。
熟すままにして、鳥に食べてもらい、
ぼくは、ぼくを実らせようか。
できれば、熟そうか。
迷ってばかりじゃ何にもならないぞ。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-10-18 20:26 | 独り言

でしょう

なんでも見せられたらね、
ほんとの無防備になれたらね、
そして、幼い頃からの、
懐かしく、愛おしい風景に
帰れるなら、出逢えるならね、
それが一番大切になっても、
おかしくはないでしょう。

一人になるのが怖いのは、
この地上でたった一人になるからでね、
一番大切になってもおかしくないことを、
急に、落としてしまうからでしょう。
急に、ぽつんってなるからでしょう。

わかる人にはわかること、
わからない人にはわからないこと、
どっち側になったって、
ぼくは、ぼくにしかなれないし、
それでいいってことでしょう。

時々は、恨めしくなったり、
時々は、馬鹿馬鹿しくなったり、
そんなことは、永遠にあるからね、
パンがいいなら、パンでしょう。
背中がいいなら、背中でしょう。

しっかりなんかしないね、
強くなんかならないね、
そっと、そっと、頼りなくてね、
ぼくは、それでもいいんでしょう。
ぼくは、そこから始めれば
いいんでしょう。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-10-15 20:34 | 独り言

影へと

ずっと、もがいている。
何かに追われて、
何にも発想しなくなったから、
ぼくの中にある勇気が、
もがいている。
格好をつけようと、
うろうろ、おろおろ、どろどろ。

抱きたいことはある。
思い切り、自分を放って、
何にも持たないように、
委ねてもいい世界がある。

逢いたいことや行きたいこと、
それに、まだ知らない音楽や、
詩の世界に繋がりたくて、
今日も明日も明後日も、
この命を使ってゆくように。

誰かのために何かのために、
できればありたいけれど、
未だ、ぼくの足先も指先も、
愛しき影に向かってゆく。

ずっと、もがいている。
ずっと、もがいている。
何が何でもと、誰かを捻らない。
少しだけでもと、
また薄っぺらな文字の並びに、
ぼくは、つかまり立ちをする。

来た、追いかけて来た。
ぼくは、うろうろ、おろおろ、
どろどろ。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-10-14 20:17 | 独り言

飛ばそう

この錨を大地に打ち込んで、
船を止めよう。
これから、どこを目指すのかを
決めよう。
ずるずると動いてしまうのは、
引きずられているからに違いない。

誰もが、いつも心配ばかりする。
心配することなんて、
ほんとは、めったに起こらない。
だけど、いつも心配している。

それよりも、しっかりと、
鎖を大地に打ち込んで、
引きずられないようにして、
新たな機会に、
あの輝ける星を目指すのがいい。
素晴らしい果実が手元に実る。

どこへ向かうにしても、
共に生きていた頃があって、
お互いに助け合えた頃があるなら、
心強いものだ。

優しい心と、明晰な頭脳と、
丈夫な体を持ち続けられるように、
調子が悪いなら少し休みながらでも、
船をまた、飛ばそう。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-10-10 20:28 | ぬ~ん

黄緑色

学生の頃、ちょうど今頃だったか。
夜、雨が降り続いていた。
冬へ向かう雨の音だけが、
下宿の薄い壁の向こうから
聞こえていた。

肌寒くて、毛布にくるまっていた。
肩が冷えてしょうがなくて、
もう一枚毛布があればなぁと、
思っていた。

悪い人間ではなかった。
悪い人間ではなかったが、
悪い道を進んでいた。
戻ってきてくれと言われたり、
戻れないかと聞かれたりで、
煩わしくて、ずっと部屋にいた。

肩が冷えてゆくうちに、
氷河期の平原を一人歩いていた。
平原の彼方からは、時々笑い声がして、
それを目指していいやら、
危険視していいやらわからなかった。
この旅の果てにはどんな人が
いるのだろうと歩幅が乱れた。

真っ赤な目をしていた。
肩の震えで目を覚ました。
夢を見ていた。

今でも覚えている。
そこで、誰かに出逢った気もする。
ヨーロッパ地方にいたという、
ネアンデルタール人のような、
いかついが、繊細な人だった。
鮮やかな黄緑色の食べ物を求めて争い、
仲間がいつの間にか、
憎みあうようになったという。
そのことはもう、ご存知かも
知れないがと、悲しい目で聞かされた。

今頃の季節は、雨もあり寒くもあり、
木々の紅葉や実りや冬への
坂道が見えてくる。
悪い道に進んでいたからか、
何かが絡まり合っていたらしい。

今日は大阪にいる。
何故か肩が冷え、喉が痛む。
話しかけたいが、遠慮がある。
悪い人ではない、悪い人ではないと、
自分につぶやきながら、
黄緑色の意味を考えている。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-10-04 21:03 | ぬ~ん

その物質

その物質は、すでに水道水の中に
入っているから、
この国じゃ、あなたの夢だって叶う。
ここで、私があなたに出逢ったのも、
本当の未来が芽生えている証拠。

その足枷の鉄を外すことだって、
あなたの夢であれば、
すぐに外れてしまう。
素晴らしい明日があなたにも
来ることになる。

ただ、そのときには、政治家が一人、
事故に遭うようになっている。
それは仕方のないこと。
政治家は最も蔑まれるべき種類だから。
嫌な人々は消えるようになっている。
それが、この国の新しい制度。

水道水の水が飲めるのは、
日本ぐらいだと誰かが言った頃から、
日本は、良きにつけ悪しきにつけ、
どこか、風変わりな島国だったようで。

水道水を飲めば、夢が叶うなんて、
そんなことは日本にしかできない。
器用で勤勉で、誰かが決めれば、
その通りになる日本にしか。

それで、どうしますか。
私について来られますか。
その物質入り水道水、
入れて来ましょうか。氷も入れて。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-10-03 20:21 | 思いつき

ちょうど秋晴れ

秋晴れになった。
澄み渡る空に薄く掠った雲が
いつも通りの秋らしい。
お墓参りにもちょうどいい日和で、
お願いしていた通りに、
手を合わせることができた。

お願いしていたのは、
また、お墓参りが出来ますようにと
いうことだった。
何故、そんなことをお願いしたかは
よくわからない。
なんとなく、なんとなく。

夏の終わり、日差しが緩くなった
午後のこと。
道の端にあるお地蔵さんに
トンボがとまっていて、
前脚をすりあわせていた。
何か拝んでいるように見えた。

その時だ。お墓参りが出来ますようにと
願ったのは。
トンボとお地蔵さんから、
お墓参りを思いついたことが、
妙に印象深かった。

感性豊かなら、ここから
詩の一つも生まれるものを、
ただ、無性にお墓参りに
行きたくなっただけだが、
ちょうどお彼岸だった。
ちょうど秋晴れになった。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-23 22:51 | ぬ~ん

夜空を見せて

信号待ちで立ち上まった。
流れる車の明かりに網膜が焼ける。
目を瞑ると、風を感じた。
雨になるもしれない。

焼けて見えないことを怖がりながら、
目を開き、夜空を見上げた。
やっぱり、見えない。

月なんて見えない、星だって見えない、
そこには、薄暗い天幕が垂れていた。

また目を瞑った。
見知らぬ異国に来たようで、
風に乗り、聞き慣れない言葉が
聞こえた。
中国じゃなく、韓国じゃなく、
イングリッシュじゃなく、
どこの国の言葉だか。

誰……目を開き、振り返れば、
自転車にまたがった開襟シャツがいた。
携帯を耳に当て勢いよく
しゃべっていた。

途切れることがない。
目があったかもしれない。
網膜がまた焼けた気がした。
東南アジアの人が多くなった。

風が強まった。
車が明かりを落として停まった。
信号が優しい色になった。
開襟シャツが携帯に怒鳴りつつ、
その優しい色に吸い込まれて行った。

台風らしい。これも東南アジアからだ。
垂れた天幕を払いのけて、
日本の夜空を見たい。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-22 19:22 | ぬ~ん

花火燃やそ

花火の残りはどうしようか。
涼しくなったから、
もう、捨ててしまおうか。
それとも、夜、公園であげようか。
風邪、ひかないように。

夏の思い出は、今年はそんなに無くて、
今から作るのもいいかしら。
虫の音を聞きながら、
思い出を埋めるのもいいかしら。

「どこにいるんですか。
どこで、どうしてますか。
花火、まだ残ってるから、
もう一度、一緒にしませんか」

過ぎたことは淡く美しく燃えて、
やがて、静かに消えてゆく。
例えば、そういうことならば、
花火は過ぎたことの化身。

もう一度、燃やせば、
あなたはもっと消えるのかしら。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-20 23:48 | 淋しい

薄の家

約束は流れたから、
今から帰ると言ったぼくは、
帰ってゆく場所に、
薄が伸びていることを願った。

庭の端にあるその薄は、
初秋の月に揺れ、
コオロギの音を聞いている、
自分に見えた。

お帰りなさい……帰り着いたなら
聞こえる柔らかな息づかいに、
生きていると感じ入る。

何にもなくていいから、
ただ、薄を慕い、夜の晴れ間の香を、
寄せてはいられないものか。
甘く眠りにつけないものか。

薄が伸びている家に帰りたい。
ぼくは、帰りたい、帰りたい。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-19 22:18 | 独り言

秋の夢

晴れの香りには、秋に出逢いたい。
苦しんだ夏の後の、
爽快な心触りとともに、
香りは体の奥底に沈まぬものか。

そのまま、百年、千年、
晴れの香りを秘めたることで、
訪れるであろう安らぎの意識こそ、
生まれくる理由の最大に思う。

秋晴れに広がる大地に、
人は、ぼくは、秋桜を敷きつめ、
横たわる寂しいあなたから、
あの日の棘を抜いている。

晴れ間の香り、気がつきますか。
晴れ間の香り、約束の香り、
明日を繋ぐ秋の夢を見て。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-18 19:44 | 独り言

街路樹が揺れ

最後の蝉の声を聞いた日、
バレリーナの手足のように、
街路樹が揺れていた。
風に枝をそらして、緑の音を
奏でていた。

あまり、夏の空を見た気がしない。
暑さで目が眩んでも、
曇り空しか、見えなかった。
ありがとうって言いたくなる前に、
バレリーナが現れたみたいだ。

今年の街路樹は、何故そうなんだろう。
毎年、同じように揺れていただろうに。
緑の音を奏でただろうに。

ねえ、いいから何でも話してよ。
愚痴でも、後ろ向きなことでも、
何でもいいからさ。
芸術というほどのものじゃないけど、
私がここで揺れているのは、
あなたを癒やしてあげたいから。

バレリーナの声がした。
少し休んだら、また空をみよう。
バレリーナの声がした。
不思議なことじゃなくて、
蝉の後、街路樹の声がした。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-17 20:30 | 嬉しい

穴を塞ぎ

両方の耳の穴をイヤフォンで塞ぎ、
パズドラをしている人がいた。
電車に乗っている間に、
ゲームをする人が多くなった。
目の前の彼女もその一人、
パズドラの犠牲者だった。

いつごろからだろう。
ゲームが人々を離さなくなったのは。
ゲームなんてと遠巻きに見ていると、
巨大な資本に食い物にされる
彼女の姿が痛々しかった。

「すいません、少し、いいですか。
そろそろ、遠巻きに見るのをやめて、
あなたもやってみませんか」

痛々しいと思っていた心に、
囁きがあった。

誰が囁いているんだろう。
辺りを見渡して、耳に手を当てると、
いつの間にかイヤフォンが
穴に刺さっていた。
見に覚えのないその物体は、
微かに震えたあと、
穴の奥に潜り込んでいった。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-16 23:33 | 怖い

近頃のゲーム

危ないから、外に出るなよ。
急に降ってくるから。
近頃、降ってくるのは雹ばかり。
氷の塊が毎年大きくなってきて、
林檎ぐらいになっている。

それに、屋根の補強をしないと、
天井を突き破ってくる。
当たれば当然、怪我、いや死ぬだろう。
どういうときに、その大きな雹が
降るのかを研究しているけれど、
はっきりとはわかっていない。

家族には外に出るなと言った。
自分は、観測する仕事があるので、
出かけるけれども、命がけだ。

金属製のスーツには、衝撃吸収用の
重たいラバーフードがついている。
元々、介護用だったパワー補強具を
装着しないと、まず歩けない。

人間というのは、どこまでも強かだ。
自然の力には勝てないと言いながら、
自然に対してできるかぎり立ち向かう。
そして、克服しようとする。

やはり、ゲームなんじゃないか。
囲われた三次元の中で、主人公は、
試練を乗り越えてゆく。
最後まで、乗り越えられればいいけれど、
途中で消えることも多い。
この気象というのか、
次のレベルは、今の金属製スーツで
防げるだろうか。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-15 19:50 | 思いつき

花が咲く話

その花びらは、調子が悪いと開き、
調子が良いと蕾になった。
小さな鉢植えの見慣れない花だが、
誰がその窓辺に置いたのかは、
わからないでいる。

誰もが毎日忙しくて、
花を愛でる余裕もなく、ただ時を
流れてゆくようであった。
そして、その中にぼくはいた。
ぼくは、職場では長く働いていて、
もう何年も経っていた。

ぼくは、複数の人々と会話をし、
何かを楽しんだり、議論したり
することが苦手だった。自分を入れて三人以上になると、
縄跳びの縄に入れないように、
じっと固まってしまうのだった。
しかし、一人の人とは、
そこそこ面白く話せたり、
深刻な話も聞けたりした。

つまり、誰かと誰かが話しているときに、
ぼくがその言葉を追いかけると、花が開き、
ぼくが誰かと直接会話をして、得意げだと、
花は蕾になるのだった。
その動き方は、ぼくの心に根をはり、
調子が悪いと開き、調子が良いと、
蕾になっているようだった。
間違いなかった。

また、目の前に複数の人がいて、
話し出した。
案の定、花びらが開いている。
ぼくはまた、言葉を追いかける
しかなかった。
ぼくはなんとなく、自分の心の土を考えた。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-14 20:41 | ぬ~ん

出よう

頭の中も指先の感覚も、
真っ白になるような毎日に、
ぼくの周りにあるものは、
いつも嵩高くて、持ち歩けず、
ただ、不便なものになってきた。

気がつけば、鞄の中やポケットの中には、
いつまでも、あやふやなものが
残っていた。
捨てるだけでいいのに、
それができないまま、時間が過ぎた。

荷物ばかりが増えてしまって、
なんのために、生きているのか
わからなくなってきたりする。
片付けるために生きてはいない。

誰かに伝えることがあるなら、
片付けられる人になってほしい。
ただ、それだけと言ってもいい。
ただ、それだけあれば、
素晴らしい明日が現れたとき、
堂々と招き入れることができる

ぼくのことは、明日からは見えない。
不便なものに囲まれているから。
ここから出たい。ここから出よう。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-11 19:44 | 独り言

髭の人

坂の途中で時々すれ違う人がいる。
早足でウォーキングをしているその人は、
五十歳を超えたぐらいの容貌で、
いつも、黒のTシャツを着て、
CWXを履いていた。

細身な体は、背丈も高くなく、
どちらかというと、
体つきは女の人のようだが、
顔を見ればどう眺めても
男だった…男だと思うしか
ないというか。

髭をはやしていた。
顎髭ではない、戦国武将のような
鼻と上唇の間にあるハの字の髭。

世の中には色々な人がいる。
それに、色々な出で立ちがある。
何が正解と言うわけでもなく、
何が間違いでもない。

その髭の人は、何かのために、
黙々とウォーキングしていた。
出で立ちがどうであろうと、
何かのために、黙々と進むことは、
今更ながらに、大切だと思う。

そういうことを絵にしたら、
きっとこういう姿になるんだろう。
ただ、ウォーキングをしている
ちょっと珍しい格好の人と、
坂ですれ違う度に思う。

黙々と生きてきて、黙々と
生きていこうとする自分でも、
いいんだと思う。
なんと言われようと、
自分の考え方や自分の感じ方を、
髭じゃなくて……
卑下しないようにしよう。
わかる人はわかるのだ。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-08 19:31 | ぬ~ん

部屋に入れば

嬉しくてしょうがないよ。
君のことがずっと好きだったから。
君とこうして眠れるなんて、
なんて幸せなんだろう。
キスをして、抱きしめるよ。

でも、どうしてここに来てくれたの。
何もかも捨てて。
ほんとうに、何もないところなのに。
きっと、君ならもっと素敵な部屋に
入ることができただろうに。

あっ、いや、ごめん、変なこと言って。
君はほんとうに、理想のタイプだよ。
奇跡としか言いようがない。
言いようがないぐらいにぴったりだ。

この匂い、この温もり、この肌触り。
包まれれば包まれるほど、
一生の感激を使いきりそうだ。
どうか、このままこの部屋にいて欲しい。

「孤独部屋の住人は、すっかり気に入った
みたいですね。
さすがは教授、すばらしい」

「いや、特別なことは何もしていない。
相性の遺伝子を操作しただけだ。
しかし、彼のように、
幸せを勘違いする者もいる。
それが、今後の課題だ」
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-02 20:43 | 思いつき

昔ながらの

ものものしい空気が漂っていた。
何かしら特殊で、壮大なことが
起ころうとしているのだろうか。
居合わせた人々は、皆、緊張に色濃く包まれていた。

ビルとビルの間の風は、
そのものものしさに怖じ気づくように、
少しも吹かなかった。
その時期、その時間にしては、も珍しいことだった。

チキューノミナサーン
チキューノミナサーン
タイヨーノゴリヨー
アリガトーゴザイマース
……ネンブンノ
ゴセイキュウ二マイリマシタ

チキューノミナサーン
チキューノミナサーン
タイヨーノゴリヨー……

空の彼方から降りてくるその声は、
次第に大きくなり、
誰もが立ち尽くして、見上げる
ようになった。

何世紀、何十世紀もの後の時代。
太陽までもが、神様のものでは
なくなっていた。
ただ、空から降りてくる声は、
どこか、昔ながらの響きを
大切にしているようであった。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-09-01 20:58 | 思いつき

遠くなる

動きます。手が。動きます。足が。
動きます。体が。動かない。記憶が。
何処へでも行けるのに、
記憶はそこにあるまま、動かない。
遠くなる。遠くなる。

思い出とは違っている。
ふんわりとしていない、光と匂い。
記憶についた、感触と鈍痛。
快感と孤独か、不安と楽観。
混ぜこぜのまま、遠くなる。遠くなる。

動きます。手が。動きます。足が。
聞こえます。耳が。見えません。あなたが。
何処へでも行けたけど、
電車は陽溜まりの中を走って行った。
遠くなる。遠くなる。
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# by konnakanjiyakedo | 2014-08-23 22:45 | 独り言